小さな同窓会
【小さな同窓会】
私の友人に〔Y子〕という女の子がいます。
決して美人とは言えませんが
髪が長く小柄ですごく愛らしい娘でした。
彼女とは成人式以来、十数年会っていません。
ある日、風のうわさで〔Y子〕が〔Y也〕になったという話を聞きました・・・
しばらく彼女と会っていなかった私はいまいちその事を理解できず、
気にもとめないでいました。
先日、小さな同窓会がありました。
地元のとある居酒屋で行われた小さな同窓会は
近年仕事が忙しくなかなか会えなかった仲間たちとの再会で
お酒も進みながら昔話に華が咲き
大変盛り上がっていました。
しばらくしたころ仲間の一人の携帯電話が鳴りました。
彼はその電話をとり何やら親しげな様子で話しだしました。
その後電話を切った彼が私たちに言いました。
「今から〔Y也〕も来るってっ!」
私以外のメンバーは至って普通の様子でしたが
十数年会っていなかった私は心の中で
「えっ、〔Y也〕って〔Y子〕のことやんなぁ?!」
考えれば考えるほど訳が分からなくなり
今からここに来るということに動揺し
酔いも完全に冷めていました。
そうした中しばらくして居酒屋の入口のドアが
ガラガラと開きました。
そして・・・
そこに立っていたのは
CAPをかぶり作業着姿で髭むくじゃらの中年男性でした。
仲間たちはその中年男性に気づき
「こっち!こっち!」
と呼び寄せました。
それに反応した中年男性は私たちに近づいてきて
親しげな様子で「久しぶり!」と仲間たちと抱き合っていましたが、
その光景に違和感を覚えた私は現実を受け入れられず
一人取り残されていました。
しかし中年男性はその私の様子に気づいた様で
私の元へ近寄ってきました。
そして私に手を差し出し
小さく笑みを浮かべながら
「久しぶりっ!」
と明るく言いました。
不思議な気持ちでした・・
私は直前まで喉につっかえていた
「誰やねんっ!お前っ!!」
という言葉を精一杯押し殺し
蚊の鳴くような声で
「久しぶり・・・」
と返しました。
何年月日が経とうが見た目がどう変化しようが
彼女いや・・彼との友情は永遠に不滅です。
(スタッフ:ナリモト)